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あふれる魅力再発見

菊人形の伝統は枚方市民の手で受け継がれています!

(財)枚方市公園緑化協会、ひらかた市民菊人形の会に伺いました。

2010/02/16


市職員と市民ボランティアの協働の輪

財団法人 枚方市公園緑化協会ひらかた市民菊人形の会は、枚方の菊人形を継承し、枚方の伝統文化の一つとしてこれからも伝えていけるよう活動されている団体です。
今回はそこで実際に菊人形制作に携わっておられる山本様(市職員)、滝口様(ボランティア)のお二人から、現在の枚方の菊人形について、これまでの経緯や菊人形作りの苦労話も交えつつ、楽しく、また熱い気持ちのこもったお話を伺うことができました。

菊人形は市民が支える枚方の文化

菊人形への熱い思いからスタート

96年の長い歴史を持った枚方パークでの菊人形が終了するのを受けて、平成18年に、プロの武河人形師のもと、市民ボランティア10名、市職員1名でこの取り組みは立ち上がりました。

ボランティアの方々はみんな、
「小さいときから枚方パークに観に行っていて、親しみを持っていた。」
「近所に住んでいたので、自分が若いころ枚方パークによく遊びに行ってたし、結婚してからは子どもを連れてもよく行っていたので、思い入れがあった。」
「96年の長い歴史を持っているのに、そのままなくなってしまうのは寂しいし、もったいないという気持が強かった。」
このような思いで参加されました。
京阪電車枚方市駅東改札口の向かいにある、市民ふれあいセンター内にて、「ひらかた市民菊人形資料展」を開催されていました。
京阪電車枚方市駅東改札口の向かいにある、市民ふれあいセンター内にて、「ひらかた市民菊人形資料展」を開催されていました。
メンバーのみなさん
メンバーのみなさん

●菊人形作りはプロの技

NHK大河ドラマの主人公をモデルに菊人形を制作
NHK大河ドラマの主人公をモデルに菊人形を制作
枚方市では、平成16年、17年と2年間、支援策として職員を枚方パークの菊人形制作に派遣し、菊人形作りに関わるようにしていましたが、実際には一人前になるのに短くて10年はかかるというプロの技を僅か2年ではとても習得できるものではありませんでした。
枚方パークで行っていた時には、人形に菊を付ける工程を行う菊師、頭(かしら)や振付を行う人形師、背景などを担う大道具師など、分業されたそれぞれの分野で専門家がいて、熟練の技術が集まって大菊人形展を作り上げていたのです。
右の男性は豊臣秀吉がモデル
右の男性は豊臣秀吉がモデル
現在は全員の協力体制で、菊の育成・栽培から人形制作、展示会ではお客様のガイド役まで、すべてご自分たちで行っておられます。

プロの技にはなかなか届かず、先生のご指導のもとまだまだ勉強中、という言い方のほうが当てはまるようです。
「人形作りは楽しんで取り組んでいます。」とおっしゃられていました。
(かしら)作りは特に楽しく、目・口・鼻・耳・歯など、顔のパーツつくりから始めます。
和紙面から等身大の頭を作る勉強をしているのですが、難しいけれど楽しく、集中できます。
時には先生にダメだしされて彫刻刀で削られることもあり、そこを修正するのですが、削られる前と同じように戻してしまったりと、失敗もあります。」
「頭、振付まで菊人形全体を作り上げることが、特に楽しく、充実していると感じる方もいます。」
人形作りのお話をされている時の楽しそうな笑顔が、印象に残りました。
和紙の型から徐々に肉付けされて・・・。<br>耳や歯型もあります。
和紙の型から徐々に肉付けされて・・・。
耳や歯型もあります。
頭が出来上がっていく様子が分かります。
頭が出来上がっていく様子が分かります。
実は、頭作りはメンバーをモデルにした人形も作られていて、よく見ると展示されている人形の中に案内しておられる方と同じお顔があったりと、本当に楽しんでおられる様子が分かりました。

●活動はワイワイガヤガヤ、時には熱中しすぎることも!

花咲爺さん<br>桜の木の前で、飛んでる~
花咲爺さん
桜の木の前で、飛んでる~
現在のメンバーは、ボランティア登録数14名、男性は65歳位の年代の方が活動の中心となっておられます。
女性は主婦の方で、衣装や小布を縫っていただいていて、50代やまだ小学生のお子さんがいらっしゃる年代の方もご活躍されているそうです。

平日のお昼間に、サプリ村野のひらかた市民菊人形の会のお部屋で、皆でワイワイガヤガヤと楽しみながら、時には少しでもモデルの写真に似せて頭を作ろうと、周りが気にならないほど熱中しすぎて、全員が無口になることもあるとか!
「大変な作業もあるけど、いろいろと楽しいことの方がたくさんありますよ!」と、元気におっしゃられていました。

最近は、枚方市駅のコンコースに菊人形を展示させていただくことができるので、歴史物だけでなく、童話や、時にはサンタクロースの人形なども制作されるようです。
一寸法師の一場面<br>子どもたちに喜んでもらってます!
一寸法師の一場面
子どもたちに喜んでもらってます!
秋の菊人形は、枚方宿の鍵屋資料館・枚方の菊花展、くずはの市民の森に展示されています。枚方市民だけでなく他市の方々にも楽しんでいただいているそうです。
菊のシーズン以外は造花の菊人形や、花をつけない人形を展示しておられます。
「御堂筋カッポにも、制作過程のパネル掲載などを展示しましたし、そのような展示の機会があることで、人形を作る励みになります。」とのこと。
これからもいろいろなところでの展示が楽しみです。

●胴殻(どうがら)は竹ひごから作ります!

竹ひごから作った巻藁を木材に括りつけて胴の形に組んでいきます。
竹ひごから作った巻藁を木材に括りつけて胴の形に組んでいきます。
「胴殻(どうがら)は、竹を割って竹ひごを作るところから自分たちでやっています。
人形の形に曲げるために皮を残したままの竹ひごを作ります。
それに藁7~8本を巻く、巻藁(まきわら)作りの作業はなかなか大変で、1本約190cmくらいの物を20~30分かけて作るのですが、1日に10本も巻藁作りをすると、字が書きにくくなったり、お箸が持てなくなるほどです。」
人形1体に、だいたい60本くらい使用するとのことなので、その作業は聞くだけでも、大変そう!!

●菊の取り付けには菊師の技が凝縮されています!

完成された胴柄<br>ここに菊を取り付けます。<br>残念ながらシーズンオフで、実際の菊が付いている人形は展示されていませんでした。
完成された胴柄
ここに菊を取り付けます。
残念ながらシーズンオフで、実際の菊が付いている人形は展示されていませんでした。
胴殻を作るのも、振付の下絵から自分たちで考えますが、そこから既に経験が物を言います。
胴殻は、菊を入れることを想定して作っていくことが大切で、木組みに合わせてきつく作りすぎると菊がつけられなってしまうなど、そこにも何年も経験していないと分からないノウハウが詰まっています。
「熟練の方なら菊をしっかり取り付けできる部分でも、素人技だと不安定になってしまったりするので、最初は出来るだけ安定した姿勢で、菊も少なくて済むような振付を考えたりしました。」とのこと。
でも、そればかりでは見ていただいたときに楽しんでいただけないので、立ち姿や腕を持ち上げた姿など、菊付けが難しい動きのある振付もしないといけないようです。
きれいな菊人形<br>実は、シーズンオフは造花で展示しています。<br>本物の菊はもっとみごとな素晴らしさです!!
きれいな菊人形
実は、シーズンオフは造花で展示しています。
本物の菊はもっとみごとな素晴らしさです!!
は、根を水苔で巻いて、それを胴殻に入れ込んで、イグサで少しずつ結びつけて着付けます。
この時には、茎の長さによって使う部分を変え、しっかりとしかもきれいに見えるように差し込みます。
プロの菊師と素人では、やはり出来栄えが違ってきます。
(じつは菊人形の裏側からみると菊の取り付けてある状態が見え、技術の良し悪しも分かるらしい。)
菊人形は秋のシーズンに、基本的に年1回の本番になるので、前年に覚えた菊付けのコツを、次の年には忘れてしまうこともあって、習得するにはまだ時間がかかるようです。
また、花は、展示期間中は苔玉に水を与えて、枯れないように大切に管理しないといけません。
制作だけでなく、展示の会期中の菊の管理も大切な仕事になります。

●菊の栽培には課題も!

「菊は人形菊と呼ばれるもので、軸が柔らかく曲げやすいものを指し、人形の着付けに適したものの総称です。
枚方パークでは、だいたい9月下旬から、10月上・中・下旬、11月上・中・下旬、12月上旬ごろまで、それぞれの時期に開花する花を準備していたと思います。恐らく100種類くらいの菊を今でも持っていらっしゃるのではないでしょうか。」
枚方パークはやはりスゴイ!

「われわれはその中から30種類を譲っていただいて、今まで育てています。
サプリ村野の敷地内にハウスを建てたり、別の場所でも1000㎡くらいの畑で栽培しています。」
菊は、毎年挿し木からご自分たちで育てていらっしゃいます。
七夕をモチーフにした七夕人形
七夕をモチーフにした七夕人形
しかし、毎年同じ土地で菊を栽培していると、いや地(連作障害)になり、生育が悪くなる状態になってしまうようで、実際育たない菊も出てきているとのこと。
場所を移動すればいいのですが、替わりの土地は無く、いや地対策がなかなか大変なようです。
「サプリ村野から畑までの移動、夏場の大変な水やりなど、人手もかかりますし体力も必要なので、実は菊栽培にとても苦労しています。
いや地対策のノウハウは学ぶことができても、栽培する土地と人は簡単に見つからず、なかなか思うように出来ないのが現状です。」
菊栽培に大きな課題が潜んでいることが分かりました。
浦島太郎
浦島太郎
小道具も豊富<br>手や足もあります。
小道具も豊富
手や足もあります。
人形の様々な部分に着せ付けるため、茎の長さも必要ですが、数回摘心して特別に仕立てた菊が必要です。
この菊を育てるには、土地、時間、人、費用などいろいろと必要な条件があるのです。
菊は600株は枚方パークから補充していただけるよう、毎年契約してお願いしてられるようですが、菊人形を守っていく上で、菊栽培がもしかすると、もっとも大きなハードルなのかもしれないと思いました。

すっかり思い入れを持ち始めた筆者は、今後、菊栽培ができなくなることで、菊人形の継承があやぶまれることを心配してしまいます。

市民による枚方大菊人形展

●おおきな夢があります!

人形の前で楽しそうにお子さんの写真を撮る親子。こんな光景が枚方のあちこちで見られる日がくるかも!?
人形の前で楽しそうにお子さんの写真を撮る親子。こんな光景が枚方のあちこちで見られる日がくるかも!?
最後にこれからの夢は?
「枚方市内の各地域で菊人形の会を立ち上げ、菊の栽培から菊人形制作まで地域で特色ある菊人形を制作し、市民参加による枚方大菊人形展を開催したい!
「そのためにも、今学んでいるノウハウを、市内各地域で教室のようにして指導し、裾野を広げたい。
休耕田などを活用して、菊の栽培も各地域で行っていただけるように広めたい!」

この夢をお聞きして、感動しました!
この大きな夢が実現できると、市民参加の枚方市の伝統文化として根付くことになるのでしょう。


ひらかた市民菊人形の会の皆さんの熱い思いと誇りがしっかり伝わってきました。
平成18年4月から受け継いでから、平成22年3月でまる4年。
ご苦労や大きな課題もありますが、約100年近くにわたる枚方の菊人形の歴史、受け継がれていくことを祈ります。
とても貴重な、いいお話を聞かせていただきました。
ありがとうございました。
by 商太